古文
旅先での束の間の恋とその終わり
6回解答
難しい
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古文
旅先での束の間の恋とその終わり
6回解答
難しい
蘆屋《あしや》の泊《とまり》
[1] 昔、男ありけり。①心尽くしの旅なれば、供する人もなく、ただひとり、津の国【注1】をさまよひありきけり。蘆屋の泊といふ所に着きにけるに、日は暮れ、雨降りければ、とある家に一夜の宿を求む。家の主《あるじ》と思しき翁《おきな》、男のただならぬ気配にや、こころよく迎へ入れけり。
[2] 奥の方より、琴の音かすかに聞こゆ。男、「誰が弾くにか。」と問へば、翁、「娘にはべり。年頃、都より来たりし人に嫁《とつ》ぎてはべりしが、今は返され、心細げに暮らすなり。」と答ふ。男、②いとあはれと思ひて、その琴の音に聞き入りて、夜を明かしけり。
[3] 次の朝、雨なほ止まず。男、翁に乞ひて、なほ一日留まることを許さる。昼過ぎ、男、庭に咲ける撫子《なでしこ》の花を折りて、歌を詠み、娘のもとへ遣《つか》はしけり。
③雨に萎《しを》る 撫子の花 見るごとに 誰が為《ため》に咲く とこそ問はまほしけれ
[4] しばしありて、娘より返り事あり。「御歌、かたじけなく拝見しはべり。されど、」とて、
荒れ果てし 宿の撫子は 露にだに 濡るる袖さへ (ア)はばかるものを
とあり。男、(イ)これを見て、げに叶はぬことなりけり、と思ひて、その日、雨の止まぬうち、ひそかにその家を出でて、またあてもなき旅路に就きにけり。
【注1】津の国:現在の大阪府北部から兵庫県南東部にあたる地域。 【注2】はばかる:差し障りがあるとして遠慮する、気兼ねする。
【補助資料:人物関係と心情】
【和歌の応酬】
| 詠み手 | 歌 | 現代語訳例 | 込めた意図 |
|---|---|---|---|
| 男 | ③ | 雨に萎れている撫子の花を見るたびに、この花は一体誰のために美しく咲いているのかと、尋ねてみたい気持ちになります。 | (撫子=あなた)あなたは誰のためにそんなに美しくしているのですか。私のために咲いてはくれませんか。 |
| 娘 | (ア) | この荒れた家の撫子(=私)は、ただ夜露に濡れることさえも人目を気兼ねしてしまう身の上なのです。 | (あなたの想いは嬉しいですが)離縁された悲しみで涙に濡れることさえ人目をはばかる私に、あなたの想いを受け入れる資格はありません。 |
傍線部①「心尽くしの旅」とはどのような旅か。本文の内容から判断して、最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
傍線部②「いとあはれ」とあるが、この時の男の心情の説明として最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
男の歌(③)と娘の返歌((ア)を含む歌)に関する説明の組合せとして最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
群I(男の歌の説明)
群II(娘の返歌の説明)
傍線部(イ)「これを見て」とあるが、「これ」が指す内容と、それを見た男がとった行動の理由の組み合わせとして最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
蘆屋《あしや》の泊《とまり》
[1] 昔、男ありけり。①心尽くしの旅なれば、供する人もなく、ただひとり、津の国【注1】をさまよひありきけり。蘆屋の泊といふ所に着きにけるに、日は暮れ、雨降りければ、とある家に一夜の宿を求む。家の主《あるじ》と思しき翁《おきな》、男のただならぬ気配にや、こころよく迎へ入れけり。
[2] 奥の方より、琴の音かすかに聞こゆ。男、「誰が弾くにか。」と問へば、翁、「娘にはべり。年頃、都より来たりし人に嫁《とつ》ぎてはべりしが、今は返され、心細げに暮らすなり。」と答ふ。男、②いとあはれと思ひて、その琴の音に聞き入りて、夜を明かしけり。
[3] 次の朝、雨なほ止まず。男、翁に乞ひて、なほ一日留まることを許さる。昼過ぎ、男、庭に咲ける撫子《なでしこ》の花を折りて、歌を詠み、娘のもとへ遣《つか》はしけり。
③雨に萎《しを》る 撫子の花 見るごとに 誰が為《ため》に咲く とこそ問はまほしけれ
[4] しばしありて、娘より返り事あり。「御歌、かたじけなく拝見しはべり。されど、」とて、
荒れ果てし 宿の撫子は 露にだに 濡るる袖さへ (ア)はばかるものを
とあり。男、(イ)これを見て、げに叶はぬことなりけり、と思ひて、その日、雨の止まぬうち、ひそかにその家を出でて、またあてもなき旅路に就きにけり。
【注1】津の国:現在の大阪府北部から兵庫県南東部にあたる地域。 【注2】はばかる:差し障りがあるとして遠慮する、気兼ねする。
【補助資料:人物関係と心情】
【和歌の応酬】
| 詠み手 | 歌 | 現代語訳例 | 込めた意図 |
|---|---|---|---|
| 男 | ③ | 雨に萎れている撫子の花を見るたびに、この花は一体誰のために美しく咲いているのかと、尋ねてみたい気持ちになります。 | (撫子=あなた)あなたは誰のためにそんなに美しくしているのですか。私のために咲いてはくれませんか。 |
| 娘 | (ア) | この荒れた家の撫子(=私)は、ただ夜露に濡れることさえも人目を気兼ねしてしまう身の上なのです。 | (あなたの想いは嬉しいですが)離縁された悲しみで涙に濡れることさえ人目をはばかる私に、あなたの想いを受け入れる資格はありません。 |
傍線部①「心尽くしの旅」とはどのような旅か。本文の内容から判断して、最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
傍線部②「いとあはれ」とあるが、この時の男の心情の説明として最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
男の歌(③)と娘の返歌((ア)を含む歌)に関する説明の組合せとして最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
群I(男の歌の説明)
群II(娘の返歌の説明)
傍線部(イ)「これを見て」とあるが、「これ」が指す内容と、それを見た男がとった行動の理由の組み合わせとして最も適当なものを、次の中から一つ選べ。