心にくきもの
[1] 心にくきもの【注1】。唐国《からくに》の紙の、いと古びて、黄ばみたるに、物語の絵ども描きたる。墨の跡かすかにして、①何と描きたるか定かならねど、昔の人の筆の運びやうなど、ゆかしく想像せらるるこそ、をかしけれ。
[2] また、人の文《ふみ》の返り事。言ひたいことは多からむに、(ア)それをば胸に収めて、ただ二言三言《ふたことみこと》、肝心のことのみ、さらりと書きて、末に「乱筆お許しあれ」などと添へたる。②言ひ尽くさぬに、かへつて思ひの深さの知らるるなり。
[3] (イ)九つ十《とを》ばかりの童《わらは》が、大人びたることを言ふも、いとをかし。法師の説法を聞きて、家に帰りて後、「人の世は、げに蝉の殻《から》のごとし、とこそ尊く侍りつれ」など、親に語り聞かする。親は、「何とも、まあ」とて笑へど、子は真顔なる、など。すべて、③さばかりの齢《よはひ》に、似つかはしからぬふるまひこそ、心にくけれ。
【注1】心にくし:奥ゆかしく、心が惹かれる。上品で優れている。
【補助資料:筆者の美意識】
筆者が「心にくし」と感じるものの共通点:
傍線部①「何と描きたるか定かならねど」とあるが、筆者はなぜそのような状態の絵を「をかし」と感じているのか。その理由として最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
傍線部②「言ひ尽くさぬに、かへつて思ひの深さの知らるる」とあるが、これはどのようなことを言っているのか。その説明として最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
筆者が「心にくき」と感じる具体例(群I)と、その根底にある美意識(群II)の組合せとして最も適当なものを、後の選択肢から一つ選べ。
群I(具体例)
群II(美意識)
心にくきもの
[1] 心にくきもの【注1】。唐国《からくに》の紙の、いと古びて、黄ばみたるに、物語の絵ども描きたる。墨の跡かすかにして、①何と描きたるか定かならねど、昔の人の筆の運びやうなど、ゆかしく想像せらるるこそ、をかしけれ。
[2] また、人の文《ふみ》の返り事。言ひたいことは多からむに、(ア)それをば胸に収めて、ただ二言三言《ふたことみこと》、肝心のことのみ、さらりと書きて、末に「乱筆お許しあれ」などと添へたる。②言ひ尽くさぬに、かへつて思ひの深さの知らるるなり。
[3] (イ)九つ十《とを》ばかりの童《わらは》が、大人びたることを言ふも、いとをかし。法師の説法を聞きて、家に帰りて後、「人の世は、げに蝉の殻《から》のごとし、とこそ尊く侍りつれ」など、親に語り聞かする。親は、「何とも、まあ」とて笑へど、子は真顔なる、など。すべて、③さばかりの齢《よはひ》に、似つかはしからぬふるまひこそ、心にくけれ。
【注1】心にくし:奥ゆかしく、心が惹かれる。上品で優れている。
【補助資料:筆者の美意識】
筆者が「心にくし」と感じるものの共通点:
傍線部①「何と描きたるか定かならねど」とあるが、筆者はなぜそのような状態の絵を「をかし」と感じているのか。その理由として最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
傍線部②「言ひ尽くさぬに、かへつて思ひの深さの知らるる」とあるが、これはどのようなことを言っているのか。その説明として最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
筆者が「心にくき」と感じる具体例(群I)と、その根底にある美意識(群II)の組合せとして最も適当なものを、後の選択肢から一つ選べ。
群I(具体例)
群II(美意識)