一筋の道
[1] 鎌倉の御家人《ごけにん》に、熊谷《くまがひ》の三郎《さぶらう》といふ武士あり。弓馬の道には、人に勝れて強きものの、①風流の遊びには、いと疎《うと》かりけり。ある時、将軍家の御前にて、茶の湯の会あり。三郎も、末席に連なる栄誉を賜《たまは》りぬ。
[2] 茶頭《さどう》【注1】の一連の所作、滞りなく進み、いよいよ三郎が茶を賜る番となる。慣れぬ作法に、三郎、額に汗して、茶碗を受け取るに、(ア)緊張のあまり、手を滑らせて、熱き茶を袴《はかま》の上に쏟《쏟》してしまひぬ。茶碗は幸ひにも割れざりしかど、②一座の空気、しんと静まり返る。
[3] 三郎、顔を赤らめ、「③武骨一辺倒の身には、かかる雅《みやび》なる場は、分不相応にござりけり。御無礼、平にご容赦を」とて、深く頭を下げ、座を立たむとす。その時、将軍、静かに声を発して、「三郎、待て」とのたまふ。
[4] 「そなたが弓を取り、馬を走らす様は、まこと見事なり。一つの道に精進する者の姿は、何事にも代へがたし。茶を쏟すは、小なる過ち。(イ)そなたの武骨なる誠こそ、この茶の湯の心にも通ふものと、我は思ふぞ」と。三郎、将軍の温情ある御言葉に、涙をこらへて、再び座に着きたりければ、一座の人々も、みな安堵の表情を浮かべたりけるとぞ。
【注1】茶頭:茶の湯の会を主催し、茶を点てる人。
【登場人物】
【物語の流れ】
傍線部①「風流の遊びには、いと疎かり」とあるが、本文中の三郎のどのような行動が、この性格を具体的に示しているか。次の中から一つ選べ。
傍線部②「一座の空気、しんと静まり返る」とあるが、なぜそのようになったのか。その理由として最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
傍線部③「武骨一辺倒の身には、かかる雅なる場は、分不相応にござりけり」という三郎の言葉に込められた意図として、最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
傍線部(イ)「そなたの武骨なる誠こそ、この茶の湯の心にも通ふ」という将軍の言葉の真意はどのようなものか。その説明として最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
この物語で起こった出来事を、(ア)~(エ)として時間順に並べたとき、その順序として最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
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一筋の道
[1] 鎌倉の御家人《ごけにん》に、熊谷《くまがひ》の三郎《さぶらう》といふ武士あり。弓馬の道には、人に勝れて強きものの、①風流の遊びには、いと疎《うと》かりけり。ある時、将軍家の御前にて、茶の湯の会あり。三郎も、末席に連なる栄誉を賜《たまは》りぬ。
[2] 茶頭《さどう》【注1】の一連の所作、滞りなく進み、いよいよ三郎が茶を賜る番となる。慣れぬ作法に、三郎、額に汗して、茶碗を受け取るに、(ア)緊張のあまり、手を滑らせて、熱き茶を袴《はかま》の上に쏟《쏟》してしまひぬ。茶碗は幸ひにも割れざりしかど、②一座の空気、しんと静まり返る。
[3] 三郎、顔を赤らめ、「③武骨一辺倒の身には、かかる雅《みやび》なる場は、分不相応にござりけり。御無礼、平にご容赦を」とて、深く頭を下げ、座を立たむとす。その時、将軍、静かに声を発して、「三郎、待て」とのたまふ。
[4] 「そなたが弓を取り、馬を走らす様は、まこと見事なり。一つの道に精進する者の姿は、何事にも代へがたし。茶を쏟すは、小なる過ち。(イ)そなたの武骨なる誠こそ、この茶の湯の心にも通ふものと、我は思ふぞ」と。三郎、将軍の温情ある御言葉に、涙をこらへて、再び座に着きたりければ、一座の人々も、みな安堵の表情を浮かべたりけるとぞ。
【注1】茶頭:茶の湯の会を主催し、茶を点てる人。
【登場人物】
【物語の流れ】
傍線部①「風流の遊びには、いと疎かり」とあるが、本文中の三郎のどのような行動が、この性格を具体的に示しているか。次の中から一つ選べ。
傍線部②「一座の空気、しんと静まり返る」とあるが、なぜそのようになったのか。その理由として最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
傍線部③「武骨一辺倒の身には、かかる雅なる場は、分不相応にござりけり」という三郎の言葉に込められた意図として、最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
傍線部(イ)「そなたの武骨なる誠こそ、この茶の湯の心にも通ふ」という将軍の言葉の真意はどのようなものか。その説明として最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
この物語で起こった出来事を、(ア)~(エ)として時間順に並べたとき、その順序として最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
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