鼻高《はなたか》の五郎《ごらう》
[1] これも今は昔、摂津守《せつつのかみ》なりける人の、鷹狩り好みたまふこと、比《たぐひ》なし。ある冬の日、多くの家子《いへこ》【注1】を率ゐて、水無瀬《みなせ》の野に出でたまひけり。その中に、五郎といふ、新参《しんざん》の若武者あり。①日頃より手柄立てて、人に勝らむと思ふ心、いと深かりければ、殊の外に装束を整へ、馬をも飾りのみして、供奉《ぐぶ》しけり。
[2] 野原にて、守《かみ》の放ちたまへる鷹、大きなる雉《きぎす》を捕らへて、舞ひ上がる。人々、「あはや、逃がすな。」とて、馬を馳《は》する中に、五郎、「我こそは。」と進み出でて、鞭《むち》を当てて馬を飛ばすに、(ア)あやしきことに、馬、少しも進まず、ただ嘶《いなな》くばかりなり。五郎、いと焦りて、なほ強く鞭打てど、馬は遂に跳ね上がりて、五郎を雪の上に投げ落としてけり。
[3] ②主君も家来も、これを見て、声も立てず笑ふ。五郎は、顔を赤らめ、恥づかしきこと限りなし。装束は泥にまみれ、誇りの高き鼻も、心なしか萎《しを》れたるやうに見え(イ)はべりき。這《は》ふ這ふの体《てい》にて起き上がり、馬を探せど、とくの昔に逃げ去りて、跡形もなし。五-郎、とぼとぼと主君のもとへ帰り参りたれば、守、「そなたの馬は、飾りのみにて、心はなかりけるよ。」とて、大いに笑ひたまひけるとぞ。
【注1】家子:家来。仕える武士。
【登場人物】
【物語の要点】
傍線部①「日頃より手柄立てて、人に勝らむ」とあるが、五郎がこのように考えていたのはなぜか。その理由として最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
傍線部(ア)「あやしき」の、この文脈における意味として最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
傍線部②「主君も家来も、これを見て、声も立てず笑ふ」とあるが、人々が「声も立てず笑ふ」のはなぜか。その理由の説明として最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
傍線部(イ)の「はべりき」の「き」と、[3]段落末尾の「ける」の文法的な説明として、最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
鼻高《はなたか》の五郎《ごらう》
[1] これも今は昔、摂津守《せつつのかみ》なりける人の、鷹狩り好みたまふこと、比《たぐひ》なし。ある冬の日、多くの家子《いへこ》【注1】を率ゐて、水無瀬《みなせ》の野に出でたまひけり。その中に、五郎といふ、新参《しんざん》の若武者あり。①日頃より手柄立てて、人に勝らむと思ふ心、いと深かりければ、殊の外に装束を整へ、馬をも飾りのみして、供奉《ぐぶ》しけり。
[2] 野原にて、守《かみ》の放ちたまへる鷹、大きなる雉《きぎす》を捕らへて、舞ひ上がる。人々、「あはや、逃がすな。」とて、馬を馳《は》する中に、五郎、「我こそは。」と進み出でて、鞭《むち》を当てて馬を飛ばすに、(ア)あやしきことに、馬、少しも進まず、ただ嘶《いなな》くばかりなり。五郎、いと焦りて、なほ強く鞭打てど、馬は遂に跳ね上がりて、五郎を雪の上に投げ落としてけり。
[3] ②主君も家来も、これを見て、声も立てず笑ふ。五郎は、顔を赤らめ、恥づかしきこと限りなし。装束は泥にまみれ、誇りの高き鼻も、心なしか萎《しを》れたるやうに見え(イ)はべりき。這《は》ふ這ふの体《てい》にて起き上がり、馬を探せど、とくの昔に逃げ去りて、跡形もなし。五-郎、とぼとぼと主君のもとへ帰り参りたれば、守、「そなたの馬は、飾りのみにて、心はなかりけるよ。」とて、大いに笑ひたまひけるとぞ。
【注1】家子:家来。仕える武士。
【登場人物】
【物語の要点】
傍線部①「日頃より手柄立てて、人に勝らむ」とあるが、五郎がこのように考えていたのはなぜか。その理由として最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
傍線部(ア)「あやしき」の、この文脈における意味として最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
傍線部②「主君も家来も、これを見て、声も立てず笑ふ」とあるが、人々が「声も立てず笑ふ」のはなぜか。その理由の説明として最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
傍線部(イ)の「はべりき」の「き」と、[3]段落末尾の「ける」の文法的な説明として、最も適当なものを、次の中から一つ選べ。